


「介護のリスクマネジメント」と聞いて何がパット思い浮かぶでしょうか?
介護のリスクとは色々とありますが、この記事では、大きなリスクである『事故防止』について書いていきたいと思います。
どこの介護施設でも「事故防止委員会」のような委員会があって、事故がある為に対策はしておられると思います。
しかし、事故ごとに対応するよりももっと前に考えたほうがいいことがありますのでご紹介したいと思います。
介護リスクマネジメントの事故防止編として、詳しく解説していきます。
この記事で得られる情報
目次
【介護リスクマネジメント】事故防止編|介護事故におけるリスクとは?
介護事故におけるリスクは色々とありますが、簡単に思いつくのは以下のようなものです。
✅訴訟
✅職員の落ち込みやトラウマ
それぞれ解説していきます。
介護事故におけるリスク①|廃用症候群
【廃用症候群】原因や症状と予防法のまとめ|プロの介護士は必須の知識とスキル!の記事にて解説していますが、廃用症候群とは簡単に言うと、
動かないことによる機能低下
です。
例えば、高齢者が転倒して骨折されたら、それだけでも大きな事故ですが、骨折そのものよりも、その後が大変です。
骨折前は元気に歩かれていたお年寄りが、
退院後は歩くどころか立つことも出来なくなっている!?
なんてことがよくあります。
入院中はもちろん、ベッド上での生活を余儀なくされますからね。
お年よりが数週間~数か月、入院されていた場合は充分にありえます。
介護事故におけるリスク②|訴訟
家族様や事故の内容、事業所の対応によっては、訴訟問題に発展するケースもあります。
現場の介護士が、一生懸命やっていても、悲しいかな、ある時はあります。
訴訟リスクに対し介護士はどんな知識を得て、どんな行動をすべきか?は介護士のみなが考えていくべきであると思います。
介護事故におけるリスク③|職員の落ち込みやトラウマ
上記の❶や❷のように複合的にリスクが介護士を襲う場合があります。
お年よりの単独の事故なのに、

と自責の念にかられている真面目な介護士さんは本当にかわいそうです。
しかし、無常にも、

とクレームを言ってこられる方ももちろんおられます。
こうなると、もうトラウマになってしまいます。それが理由で辞めていく若い介護士もいます。
しかし、そんな自責の念にかられる介護士を必死で励ますような施設はあまりないでしょう。
【関連:介護士が質が悪いと言われる理由①|福祉職なのに新人いじめ?(作成中)】
上記のリスクに対する対策は、
「起きてしまったことに対してどうするか?」
のリスク対策であり、当然考えておかないといけないコトであります。
しかし、これら以前にもっと最優先に考えておかないといけないことがあります。
それを次項にて解説していきます。
【介護リスクマネジメント】事故防止編|最優先に考えるべきことはコレ!
では、介護リスクマネジメントの事故防止について、最優先に考えるべきことはというと、
✅職員がイラっとしない方法を考える
✅責任分掌(ぶんしょう)を明確にする
というポイントが大切になってきます。
それぞれ解説していきます。
【介護リスクマネジメント】事故防止の大切な考え方①|事故ゼロ地点で考えない


事故防止委員会などで、たまに聞くセリフではあります。
この意気込みはすごいですよね。気持ちとしては素晴らしいものです。
しかし、現実問題として、
「介護現場において、事故をゼロになんて出来るのか?」
ということです。
結論はと言うと、
絶対に無理
です。
利用者1人に対し、職員がマンツーマンで付けるなどの、破格の待遇の条件が揃わない限りは。
現実はどうでしょうか?
夜勤などは、職員1人で50人の要介護者を見るケースもあるのが現実です。
それで

という試みは、天文学的に遥か先の夢物語でしかありません。
だから、ここで大切なのは、
事故は絶対に起こるもの
としての「事故ありき」の考えでスタートすることです。
【介護リスクマネジメント】事故防止の大切な考え方②|職員がイラっとしない方法を考える
事故をさせないように防止しようとするから職員はイライラします。


どこの介護施設でもよく聞くセリフですよね。
しかし、これらは、職員の資質の問題ではありません。
ほぼ誰であっても言います。
事故を防止しようと一生懸命な人であれば、間違いなく言います。

と、本人のカラダも心配だし、

などと暗に圧力をかける施設の場合は、事故の責任が自分に回ってくるかもしれないわけです。
だから、正常な頭脳の持ち主なら、


が普通なのです。
何もおかしな事を言ってるわけではありません。
それを


と言っているほうがナンセンスです。

と、半自虐的に反省するのがプロの仕事ではありません。
良い結果を出すために知恵を絞るのがプロの仕事です。
そのためには、言葉遣いなどの表面上だけ取り繕っても仕方ありません。
どれだけ必死に頑張っても、間違いなく事故は訪れます。
そして、人間は感情的になったら言葉を選べない時もあります。
だから、最初に立ち返り、
職員がイライラしなくて済む方法を必死に考えること
が最優先です。
【介護リスクマネジメント】事故防止の大切な考え方③|責任分掌(ぶんしょう)を明確にする
職員がイライラしなくて済む方法は人によっても違うとは思いますが、代表格は、

といった上司の発言・態度ではないでしょうか?
こう言われて気分の悪い人はいるでしょうか?

と燃えてこないでしょうか。
組織には、職務分掌(しょくむぶんしょう)というものがあります。
会社組織には色々な職務がありますから、それぞれの職務の範囲のことですね。
例えば介護士がケアマネや生活相談員の仕事までやっていて、介護士分の給料しかもらえないとおかしいですよね?
そのために、職務分掌というものは決めておかないといけません。
そして、同じく責任分掌というものも決めておくべきであります。
✅家族様への謝罪は誰が行うのか?
✅クレームを言われたら誰が責任を負うのか?
などの分掌をしっかりと話し合って決めるべきです。
全てを介護士でやってしまっていないでしょうか?

などと言っている場合ではありません。
放置しておいて待っているのは、虐待事件や職員の大量退職などの悲惨な結末かもしれません。
施設を守るための提案として、特にリーダーさんや主任さんは折衝していきましょう。
【介護リスクマネジメント】事故防止編|失敗の本質を理解することから始めること
例えは悪いかもしれませんが、大きな問題が出る介護施設などは、戦時中の日本の大本営ようなことをやっているからイタイ目に合うのです。
現場の最先端で何が起こっているかも知らずに、現場職員は、事故を起こさないように必死に走り回っているのに、幹部はただ、



などと、保身のための発言だけ言っているから、いつか大きな事件が起きるのです。
昭和20年、明らかな敗戦がわかっていたのに、その後も戦争を続行して多数の無残な戦死者を出してしまった戦時中の大本営と似ています。
しかし、今は令和の時代です。戦死者はありえませんが、こんな介護施設に襲ってくる大問題は、
止まらない退職者の増加
です。
引く手あまたの介護業界です。
なにか気に入らないことがあったが、本当に恐ろしいスピードで、入職されては、すぐに退職していかれます。
それでもなお、

などと言う幹部もおられます。
介護施設や介護士としての本分とは、まずは、
要介護者の安心と安全を守ること
だと思います。
そこに対して、介護職員と経営幹部とが同じ方向を向いていないと間違いなく関係は破綻します。
介護職員は幹部のために身を捧げる兵隊ではありませんからね。
本質を見誤ると確実に負けますので。
【介護リスクマネジメント】事故防止編|最優先に考えるべきことはコレ!|まとめ
介護リスクマネジメントの事故防止について、最優先に考えるべきことは、
✅職員がイラっとしない方法を考える
✅責任分掌(ぶんしょう)を明確にする
というポイントであると、解説してきました。
賛否両論はあると思います。
しかし、間違いなく言えるのは、そこで働く人たちは、
責任が怖いのです。
そして、人間を扱う仕事である以上、
責任が不明瞭である
ということが人を追い込みます。
超人手不足の業界です。介護士の若い芽を摘んでしまわない為にも、発想を変えていくべきであります。
事故のショックで悩んでいる新人に対し、

なんて言っても遅いのです。
幹部やベテランから変わっていきましょう!