
介護業界に身を置いていると、経営者や管理職から、
「丁寧な言葉遣いで!」
「声掛けが一番大事!」
「介護は声掛けに始まり、声掛けに終わる!」
といった事をまぁ確実に言われます。
間違いではないですよね。全て正解です。きちんと指示に従って下さいね。
でもでも、そもそも、この声掛けが出来ていない経営者や管理職から言われたらどうですか?
素直に従えないですよね~。
子供でも自分の事を棚にあげる親の言うことなんて聞きませんよね~。
今日は、そんな他人には偉そうに言うのに自分の事は神棚にでも上げてしまう勢いの経営者さんや管理職さん向けの話です。
自分の役割を間違えるか否かで施設の雰囲気が大きく左右されるお話しです。
目次
介護士は誰に対して「声掛け」するか?
介護士が声掛けする相手は?
言わずもがなですが、介護士さんは、介護サービスを受ける利用者さんに対して声掛けをするのですよね。
「一に声掛け!」
「二に声掛け!」
「三も四も声掛け!」
などと厳しい施設では教わるかもしれません。
それだけこの声掛けは介護業界では大切です。
そして、介護はチームプレーですので、円滑に仕事を進めようと思ったら、仲間への声掛けもとっても大切です。
なぜ声掛けがそこまで大切なのか?
なぜ、介護業界ではそこまで声掛けにうるさいのか?
それは声掛けしないと以下のような事が起こるからです。
声掛けが大切な理由
・利用者さんは人間ですので、まずもって信頼関係が築けません。
・認知症者には警戒心が強い人が多く、次なる周辺症状に繋がる。
・いきなり介護をすると利用者がビックリして、その勢いでケガをする事がある。
・利用者は次に何をするか理解出来ず、自立支援に繋がらない。
・声掛けにより刺激を与え、発語を促す事は、誤嚥や認知症予防にも有効である。
などなどです。
これだけ聞いても、「声掛け一つとっても、きちんと目的がある」という事がわかりますよね。
「介護」の定義とは?
たまに残存能力がある利用者さんなのに、全介助をしてしまっているような介護士さんもみかけます。残存能力とは、まだ障害されていない使える能力の事です。
介護とは、なにもかもを介護者がする事ではありません。
利用者さんの残存能力を見極めて、使える能力は使ってもらわないといけません。
国民は要介護状態にならないために予防する義務があると、介護保険法にも定められています。
そして、この自立を促す行為は、適切に声掛けが出来ないと無理なのです。
→関連記事:【プロ介護シリーズ】ナンパでもセールスでも声掛けは介護士に学べ!?
経営者や管理職は誰に対して「声掛け」するか?
あなたの施設のトップは「声掛け」していますか?
あなたの働く施設では、経営者の方が「声掛け」できていますか?
あなたの目から見てどうですか?
「そんなものは介護士の仕事だろ!?」
「私には経営者の仕事がある!」
とふんぞり返っている人ではありませんか?
利用者や家族さんの前でだけ、いい顔をするような人ではありませんか?
そういった経営者の場合は危険です。間違いなく管理職も真似して勘違いしますからね。
経営者や管理職は誰に「声掛け」するのか?
では、経営者や管理職の人はどこの誰に気を配って声掛けするべきなのか?
自分の部下、社員ですよね。
甘やかすという意味ではありません。
常に気に掛ける。心を傾ける。関心を持つ。という事です。
これが実践出来ている施設や企業って、きっと上手くいっていると思います。
しかし、私が勤めてきた施設や企業では、まずもってこれを実践できている所は皆無でした。
「経営者や管理職が、職員に声掛けする時は、叱責の時だけ。」みたいな関係になっていませんか?部下からそんな声が聞こえてきませんか?
そんな上司の言う事を素直に聞く部下がこの世にいるでしょうか?
日ごろ自分に関心がないのに、説教だけは垂れてくるようなそんな親の言うことを聞くお利口な子供がいるでしょうか?いてもきっと、恐怖心で威圧されているだけです。そのうち発狂しますよ。
声掛けの発端や動機は何か?
声掛けの発端や動機は、相手への「関心」です。
街を歩いていて、超ドストライクなかわいい子や超イケメンとすれ違ったら、
「声かけたいな~。」
なんて内心思うでしょう?
目の前の人に「関心」があるからです。
人間というものは、相手への「関心」があると、自然と声を掛けようと思う動物です。
声を掛けてこない経営者や管理職などは、自分の会社で働いてくれている社員に関心がないのです。
「働いてくれている」なんて視点はこれっぽっちもないでしょうね。
これだけ売り手市場で介護離れが甚だしい業界なのに、危機感ゼロです。
経営者さんや管理職の方々は、自分の立場にばかり関心を寄せるのではなく、自分の部下や社員に関心を寄せましょう!
それが円滑に組織を回す最良の手段でもありますし、そもそも上役の人の義務です。
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介護業界での「商品」とは何なのか?
介護業界の商品とは何か?
製造業であれば、社員が商品を作って、その商品がお客さんを満足させてくれます。
だから、社員はさらにその商品に磨きをかけたり、新しいニーズを探って新商品の開発に取り組んだりします。
そして、社員はお客さんに対し、間接的に価値提供を行う事が出来るわけです。
これが介護業界の場合だとどうなるでしょうか?
お客さんとは、利用者さんや家族さんですよね。
では、商品とは?
う~ん、物ではなく、サービスですからね~。
結論を言うと、
介護業界での商品とは、介護職員そのものなんですよね。
商品に磨きをかけるのは誰か?
介護職員そのもの(商品)が利用者さん(お客さん)に価値を与えるわけですから、その商品に磨きをかける必要があります。
その商品に磨きをかける事を、その商品を管理する人間が何もせず、商品だけにやらせているのが介護業界です。
私は介護業界を渡り歩き、その中で、リーダーや主任などの管理職をしてきましたが、経営者を含めマネジメントについて学ぶ姿勢をもった人間はまず皆無でした。
商品に磨きをかけない→社員が育ってないまま管理職になる→「管理職とは何か?」を学ばないまま管理職を続ける→責任だけのしかかり耐えきれず退職する
のような悪循環が出来上がっている所は多いのではないでしょうか?
さいごに
愛情を傾けるから良い商品が出来る。
関心を傾けるから素晴らしい社員に育つ。
文字にすると、至極当たり前の事のように見えます。
ですが、実際にやるとなると難しいのでしょうね。
私も管理職をしていた時期はよく感じていました。
子供じみた話かもしれませんが、振り返れば、
自分が上司から関心を持たれていないのに、自分の部下に関心を持てない
といった感情が自分の中にあったように思います。
こんな事を想うのは、私だけかもしれませんが、みな人間で同じ感情の生き物ですから、承認欲求もあるだろうし、掘り下げていけば同じような理由に当てはまるのではないかと思います。
どうか、一番上の立場の方が発端になって、社員に関心を持ってあげてくださいね。きっと社風さえ変わると思います。
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