介護の仕事の大変さの本質とは?「誰でもできる」って本当に言える?
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介護の仕事って「誰にでも出来る」ってイメージがどうしても拭えないですよね。

昨年にも財務省の方の発言により炎上していましたが、この日本という国は「権威」を本当に大事にする国なので、「単純労働」などといったくくりで介護を表してきました。本当に介護が単純労働ならここまで人手不足で悩む事はないですよね?

この業界の人手不足の理由は、仕事の大変さが一番の理由ではないと私は思っていますが、この記事では「介護の仕事の大変さ」にフォーカスして書いていきます。

この記事を読んでも「誰でもできる」「単純労働」と言い切られるのであれば、この先も介護業界の人手は潤わない事は必至でしょう。

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【本質①】たった1秒が命取りの仕事

たった1秒が人生を狂わせる理由

介護を舐めている人にとっては、

「そんな大げさな!(笑)」

と失笑する所でしょう。

 

しかし、本当に事実です。

 

介護士さんは、施設によっては夜勤を1人でしている場合があります。

ヒドイ所では50名の利用者を1人で対応している所もあります。

そこで足元が覚束ない高齢利用者さんが同時に3人、4人と動き出したら・・・。かなりの確率で転倒事故が起きます。

 

また、利用者さんは何故か息を合わせるように、3人、4人と同時に動き出す事が多いんです。これが本当に施設の介護士を悩ませます。

介護士はこのように同時に3~4名のナースコールやセンサーが鳴った場合、瞬時に危険性の高い人やその優先順位を判断し、順番に対応していきます。もちろん1人の利用者を対応中は、他の動いている利用者の事が気にかかって仕方ありません。

 

でも目の前の利用者さんの事はおろそかに出来るわけもなく、的確に迅速に対応をして、次へ次へと対応していきます。

でも、悲しい事に、「バタッ!」とか「ドンッ!」とか「いたっ!」といった、介護士にとって身の毛もよだつ音が耳に入ってくる事が多いのです。

 

そう、転倒、コケているのです・・・。

 

高齢者ってこの転倒により、大腿骨頸部骨折や、腰椎圧迫骨折などの骨折に繋がる事が、ほんっっとに多いんです。

→関連記事:大腿骨頸部骨折

→関連記事:腰椎圧迫骨折

 

そして骨折したらしばらく歩けなくなるわけですから、若者と違って廃用症候群にもなり、そのまま歩けなくなり、認知機能も低下して・・・退院できず、そのまま病院で・・・といった悲しい進路を辿っていく人も多いのです。

→関連記事:廃用症候群

 

「あと1秒、この利用者さんの部屋に着くのが早かったら・・・」

「あの時、同時にナースコールが鳴らなかったら・・・」

 

と私も何度悔やんだかわかりません。

 

勤務中は全くリラックスできない

このように、たった1秒の対応の遅れで、利用者さんの死期を早めてしまう事に繋がる可能性もあるわけです。

 

介護施設は生活の場であり、利用者さんと24時間を通じて接していきます。だから家族よりも接する時間が長かったりもします。それゆえ、それだけ愛着もわいてくるという事です。

だから、「気にするな。」と気休めを言われても、そう簡単には割り切れませんよね。

 

こういった事がいつ何時起こるかわからず、またその事故頻度が高いのが介護施設です。

だから正直、勤務中はリラックスできません。

気の緩みでの事故でははないのです。

 

気を張っていても防げない事が多いのが介護事故なのです。

だから常に神経を張り詰めたままで数時間~十数時間を過ごす事が多いのです。

認知症者の増加と介護者の減少

介護士が辞めない施設では、ほぼ間違いなく、経営者が介護士の事もきちんと考え、利用者さんの受け入れ基準なるものを設けているでしょう。つまり、どんな利用者でも受け入れるわけではないという事です。

ホテルなどでも迷惑行為をする宿泊客には帰ってもらいます。当然です。他のお客様にも迷惑ですし、そこで働くスタッフが去ってしまいます。

福祉の場合、ちょっとニュアンスは違いますが、でも利用者さんの受け入れ基準などの視点はしっかりと取り入れておくべきです。

とてつもなく狂暴な方もいらっしゃいますからね。利用者さんも家族さんも含めて。その対応をすべて現場介護士に任せて、トラブルが起きたら

「それを巧く立ち回るのがプロってもんだ。」

的な発言をする経営者がいたら要注意です。あなたの上司がそういう人ならそんな職場からは即刻逃げてください。

いつか取返しのつかない事になりますから。

そういった、どこにも受け入れてもらえないような大変な利用者を、受け入れ基準もなしに誰でもござれで受け入れている施設もあります。きっと対外的には評価が高いんでしょうね。

しかし、内部事情は全く逆です。そういった大変な利用者が増える一方で、介護士の数は減っていく。介護士たちは間違いなくパンク寸前にまで不満を募らせています。

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【本質②】目の前で人が死ぬ現場!?

既に人が死んでいる!?

ふざけているわけではないんです。

題名の通り、利用者さんのお部屋を巡回など行っていると、利用者さんが

既に死んでいる・・・

ことがあったりするんですよ・・・。さっきまで元気だったはずなのに・・・。

(※厳密には、我々介護士は医者ではありませんので、明らかに呼吸や心配停止でも死亡診断はできません。)

しかし、明らかに顔色悪く、息もしていなく、脈も動いていない。手足も完全弛緩状態でダラ~ンとなってしまっている。

医師や看護師、消防隊員、救急救命士など人の死に直面する仕事の人は大変ですよね。でも、介護士も直面する事が多いんです。そして迅速に対応しないといけません。

それが何故「誰でも出来る簡単な仕事」と言われるのか・・・。意味不明ですよね。

 

夜中に一人で死人の発見と対応

この利用者さんが死んでいる・・・等の急変や事故って、なぜか夜勤中に多かったりします。

世の中の施設介護士さんどうですか?同じですよね?(;^ω^)

また、夜勤って介護士さん1人で対応している施設も多いはずです。

「介護施設の夜勤を1人でする」初めての時って、すっごく緊張しませんでした?

私はよく覚えています。バイオハザードのような光景であったことを。(利用者さんごめん・・・)

明らかに利用者さんの様子がおかしいと思ったら、すぐさま看護師さんにオンコール(電話)して、利用者さんの状態を伝え、指示を仰がないといけません。救急車と呼ぶのか、様子観察するのか、指示してもらうわけです。

少しの変化ならまだ冷静に対処できます。でも明らかに「ヤバイ!」場合、ベテランになった今でもやっぱり気が動転します。無理やり冷静に保とうとしますけど、内心はバクバクです。だって、この状況も1秒を争いますからね。

地獄絵図?そこは血の海?

「転倒させないでくださいね!」

「ケガさせないでくださいね!」

「きちんと介護してくださいね!」

などと家族さんから言われてを利用を受け入れるショートステイも多いかと思います。

でも悲劇は起きてしまうんですよね。

ショートステイなど特に突発的に利用されたり、初めて利用されたりする方が多かったりするので、利用者さんも不慣れでソワソワしちゃうんですよね。

だから余計にウロウロとしちゃってドッテ~ン!!となり、頭がパックリと割れ、多量に出血なんて事があります。

また、利用者さんがお持ちの持病の理由で突発的に吐血され、辺り一面が血の海と化する事もあるわけです。とにかく高齢者ですからね、いつ何が起こるかわかりません。

もし、介護の仕事が、「高齢者の人権の尊重をしなくていい」「命を守らなくてもいい」といった仕事ならば「誰でもできる仕事」と呼ばれてもいいでしょう。

しかし、現実は違います。

介護業界は医学と違って科学で解明できる分野は責任をもってセオリーを踏み、そうでない部分は責任を負わないという特色のものではありません。だから成功と失敗が曖昧な部分が多いのです。つまり、見る人の偏見によっては、冤罪であっても罪を問われてしまう事がある危険性をはらんだ仕事であるという事です。

→関連記事:介護と看護(医療)との違いって?

【本質③】忍耐力!介護士は格闘家!?

上手になだめるのが介護のプロ!?

どれだけ重度な認知症者でも、どれだけ重度な精神病を抱えていても、「上手になだめて信頼関係を築くのが介護のプロだ!」といった、ちょっと痛い考えをお持ちの人もたまにいらっしゃいます。

私には、介護士の地位をおとしめて自分の存在価値を高めたいだけの哀れな心の持ち主だとしか思えません。

この他人をコントロールしようとする意図がある限り、認知症の人との関係が上手くいくはないと私は思っています。

「相手に合わせて自分を変容させる」難しさ。間違ったプライドをお持ちの方にとっては到底できない事だと思います。

→関連記事:認知症の人を落ち着かせるテクニックってあるの?

うまく交わすのが介護のプロ!?

利用者の中にはいきなりパンチ、びんた、顔にめがけてツバ吐き、噛みつき、爪をたててつねり、ひっかき、などの行為に出られる事があります。たとえほんの数秒前まで一緒に朗らかに喋っていた人でもです。

豹変するのです。

こういった「問題行動」と呼ばれてしまっている行為も、「介護士の対応がよくないから問題行動に出る」と断言するような、痛~い人がたまにいます。ま~やはり現場を知らない人ですけどね。

介護士の対応如何で認知症者の周辺症状を悪化させてしまう可能性は、私も感じていますが、必要条件にはなっても充分条件ではないということです。

→関連記事:利用者の暴力やパワハラにはどう対処するのが良い?

噛まれたら?殴られたら?ウンコ付けられたら?

私がいた職場でもありましたが、女性職員が体の大きな男性利用者から殴られたり、跡がクッキリ残るくらいにつねられたり噛みつかれたりしても、経営者は都度同じ返答で「大丈夫?ケース記録に残しておいてね。」といったような対応だけの所がありました。

考えられますか?

自分の家族が仕事に行って、たとえ客と言えど、暴行を受けて体に傷を創って帰ってくる・・・。

私がこの人の親なら、旦那なら、速攻で文句言いにいきますよ・・・。

男性が女性を、女性が男性を介護するって、今の介護業界においては仕方のない事です。ですが、そこから想定されるリスクはしっかりとマネジメントしておかないといけません。

今までの経験上、この福祉業界の経営陣には、「職員が痛い目にあっても構わない。相手は認知症があるのだから、暴力をふるわせた介護士に問題がある。」と考えている甘えがあるように思えてなりません。

だからこそ、あなたの職場でそんな雰囲気を感じたなら、速攻で逃げましょう!

我々は格闘家ではないという事です。

→関連記事:【アンガーマネジメント】介護士は必須!

さいごに

どうでしょうか。

ここまでの内容で、

「介護は誰にでもできる仕事ではない」

という事がすこしはわかってもらえたでしょうか。

そもそもですけど、「誰でも出来る仕事」なら、要は簡単なわけで楽なわけで、社会問題になるくらいに人手不足にならないでしょうからね。

でも、そんな「誰でもできる仕事」的な偏見を持つ人たちも、決してその人達が悪いわけでもなく、社会が創ってきた罪だと思います。

専業主婦、家事、育児、介護、女性の権利をないがしろにしてきたこの日本社会の罪が巻き起こしている問題のように思えます。

「介護業界には質の悪い職員が多い」とも言われますが、もちろん比定するつもりはありませんが、この問題も社会が創りだした問題だと思われます。

①「誰でもできる仕事」のイメージと現実のギャップ

②仕事が続かない

③人手不足

④売り手市場で敷居が低くなり誰でも入社できる

(簡単だと思って入社してくる)

⑤仕事が続かない

・・・・・・

 

といった悪循環を続けているだけの事です。

また、介護にやりがいを感じている人達はやはり総じて奉仕精神が強く、少々の事では事を荒立てない、逆に言えばお人よしが多いです。

だからこそ、大きなムーブメントが起きる事はまだまだ先だと思われます。

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